総合ビジネス支援協会ブログ

ドラッカーが見ていた将来 4 「経済人」を超えて

こんにちは。

今日は、ドラッカーが「ハーバード・ビジネス・レビュー(HBR)」に投稿した第4作目の著書、

「経済人を超えて」(1955年)

について取り上げたいと思います。
本著作でドラッカーは、経営者に対して、

「経済人」と「道徳人」の両立

ということを提唱します。つまり、

1.設定された目標を達成するために、長期計画および体系的な組織を重視すること。
  (経済人)

2.経営者の社会的および道徳的責任を常に認識すること。
  それは同時にスキルおよび業績水準の向上を必要とする。
  (道徳人)

以上の2つの基本方針を、別々に行うのではなく、
1つの経営課題として統合させる必要性を提唱します。

「人材マネジメント、そして倫理的かつ精神的な基本価値の認識、
 これらを長期計画に組み込まなければ、経営者に課せられた事業目標の達成は
 難しくなるだろう」

それでは、なぜ上記2つの方針を統合させる必要があるのでしょうか。
ドラッカーは、この当時の「人材にまつわる変化」をその理由に挙げ、
具体的には、以下の4つの理由を指摘しています。

①人件費の固定費化
 人件費が「変動費」から「固定費」に変わってきたこと。
 つまり、生産高に直接関わる直接人件費(変動費)に比べて、
 生産高の短期変動の影響を受けにくい間接人件費(固定費)の割合の増加。
 さらには、「雇用の安定性」を求める社会的圧力による「就労基盤の永続的維持」。
 それは、長期的な意思決定にも人件費の考慮を要請することとなる。

②人的資本の不足
 資金や原材料、市場の供給より、むしろ有能な人材の供給が、計画を実現し、
 目標を達成するための能力を左右するケースが増えている。
 そのような人材は常に不足しやすく失われやすいため、外部からは確保しにくく、
 内部で育成しなければならない。

③経営者の育成
 事業の成果が長期的スパンで求められるようになるにつれ、
 将来予測に基づいて行われた意思決定につき、
 その意思決定を将来修正する手段を、意思決定プロセスに盛り込むことが必要。
 言い換えれば、明日我々を救ってくれる人材を
 今日用意しておかなければならないということ。
 あらかじめ経営者を組織的に育成することを経営判断に織り込む必要性は、
 将来要求されるものではなく、現在要求されている。

④オートメーション
 オートメーションをひとたび導入すれば、かなり長期にわたって一定の範囲で
 生産を維持しなければならなくなる。
 また、労働の大半は直接業務から間接業務に変わる。
 つまり、オートメーションは人件費を変動費から固定費に転換させる。
 オートメーションは労働力や人件費を大幅に削減するのではなく、
 逆に管理者、専門職および技術者の仕事をいっそう増やす。
 さらに、オートメーションの導入には時間がかかる。

ドラッカーは以上の4つの理由から、
人材マネジメントの長期計画と目標設定の必要性を提唱したのです。

そして、経営者の責任として、以下の4つの領域に重要な関心を持つことを挙げて、
本著作を締めくくっています。

①組織
②人材開発
③報酬やインセンティブを含めた従業員の動機づけ
④組織の性質、すなわち組織風土、価値観、規範および人間関係

まさに、「事業承継」「後継者問題」が社会問題となっている現在、
1955年の段階で「経営者の育成」をすでに提唱していたドラッカーの目には、
どのような将来が見えていたのでしょうか。

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山本 誉 (経営コンサルタント)
中小企業の経営改善、成長支援を行う経営コンサルタント。認定事業再生士。プロフェッショナルCFO。 [プロフィール]

2019年2月27日

カテゴリー:ビジネス